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「イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告」ハンナ・アーレント [それでもどっこい生きてます]

やっと読み終わりました。

先の日記にもちょろっと書きましたが、この本はイェルサレムで裁判を受けることになった、ナチス将校のアイヒマンの裁判記録を元にしたルポルタージュです。

筆者のハンナ・アーレントはユダヤ人。

ニュールンベルク裁判(国際軍事裁判)が1945~46年、このイェルサレム裁判(イスラエル法での裁判)は1961年なので15年後、ということになります。

とても簡単に感想が書ける内容じゃないので、どうまとめようかと困っていますが、本としてはあくまで「アイヒマンという被告に対する裁判として適正だったのかどうか」に焦点が当てられています。

アイヒマンをユダヤ人大虐殺の主犯格として扱おうとする検察側に対する異議、アイヒマンがアルゼンチンから拉致されイスラエルの法で裁かれることに対する異議など、基本的には裁判に対する異議が多く述べられています。

ニュールンベルク裁判や東京裁判などと共通する法律的な問題、つまり事後法で裁かれること、勝者の裁きであること、についてもふれています。

ただハンナ・アーレントは、色々な異議を唱えつつもアイヒマンが死刑になったことには異議を唱えません。ここがすごく難しい。色々と書かれているんですが、うまく説明できません。

とりあえず思うことは、彼女の問題意識はモノゴトが単純で一方的な見かたに偏ってしまうことにあるのだと思います。
「被害者」であるユダヤ人が「正義」を振りかざすことへの疑問、それを指摘できないユダヤ人社会。

もちろん、ナチスが大量の人々を殺し、それに加担した罪でアイヒマンが裁かれるのは当然だといえます。

ただ、それでも「勝者の裁きであること」をどう受け止めるか。
つまりハーグ陸戦条約によって「戦争犯罪」を規定するなら、戦勝国にも当然戦争犯罪者はいるわけで、でも国際社会はそういう人たちを裁かなかった。

ここに政治が垣間見える訳で、この問題は基本的に今も解決されていないと思います。

東京裁判との比較で読んでしまったので、ちょっと偏ってるかも知れません。

ハンナ・アーレント自身は、とても勢いのある人ですね。
ある意味思い込みが強いのでしょうし、客観的な書き方をしつつも、自分が思っていることがほとばしっています。ステキです。
ただ、それだけに、この本だけがすべてという考え方はしない方が良いでしょう。彼女もそう思っていると思います。

思い込みが強い人は好きなので、私はとても面白く読みました。

イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告

イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告

  • 作者: ハンナ アーレント
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 1994/08
  • メディア: 単行本


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【タダですよ】東京国立博物館、敬老の日 [それでもどっこい生きてます]

今日9月18日は敬老の日。
東京国立博物館に無料で入れます。

【東京国立博物館】

今の展示の目玉は、酒井抱一の「夏秋草図屏風」。(今日までの展示です)
昨日行ってみて知ったんですが、これって酒井抱一の描いた「風神雷神図屏風」の裏に描かれていたものなんですよ。へぇー。

んで、狙ってるのかなんなのか分かりませんが、その「風神雷神図屏風」の展示が【出光美術館】で行われています。(こちらは10月1日まで)

風神雷神図は、俵屋宗達(桃山?~江戸初期?)がオリジナルを作成し、宗達を慕った尾形光琳(江戸中期)によって模作が作られ、さらにそれを見た酒井抱一(幕末)も模作を作っています。
一般的に言われる「琳派」の系譜によって作り続けられたわけです。

しかも、尾形光琳と酒井抱一はこの模作を作っただけではなく、師の作品である「風神雷神図」に対する返答となる作品も残しています。

それが、尾形光琳の「紅白梅図屏風」(MOA美術館蔵)であり、今東京国立博物館に展示されている酒井抱一の「夏秋草図屏風」であるのです。(本人に聞かなきゃ分からないけど)

うー。すげー。

元々、風神雷神図や紅白梅図が好きだったこともあったのですが、尾形光琳や酒井抱一の師に対する尊敬とそれを乗り越えようとする気持ちにとても感動ですよ。

「偉い人が書いた」とか「国宝(需要文化財)だから」とかじゃなくて、会ったこともない人を師に選び、慕い、超えようとしながらも「一緒に」作品を作ろうとする。その時間軸に捕らわれない行動にとても感動するのです。


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